空洞の景気回復 2016 5 22

書名 未来からの警告
著者 塚澤 健二  集英社

 2015年8月に世界の金融市場で株価が急落したのは、記憶に新しいところです。
この原因は、一般的に言われていることは、
2015年8月11日に中国人民銀行が突然、人民元の切り下げを行ったことを契機として、
上海市場の暴落があって、続いて欧米市場や日本市場へ波及したと言われてます。
 しかしながら、著者は、その原因が違うのではないかと指摘します。
この本によると、世界同時株安の原因は、次のようなことだったと書いてあります。
 最大の原因は、商品先物取引を行う、
スイスに本社を置く総合天然資源会社グレンコア社の経営危機による株価暴落と、
同社に10兆円規模を貸し込んだと言われる、
ドイツ銀行をはじめとする欧州大手銀行への波及懸念であった。
(引用、以上)
 資源の乏しい国家にとって、
資源価格が下落することは、経済にプラスとなりますが、
商品先物取引やデリバティブの発達によって、
資源価格が急落すると金融危機が発生して、
その金融危機が世界へ波及してしまいます。
 本来であれば、資源安は、世界経済にプラスですが、
商品先物取引やデリバティブという金融経済の発達によって、
経済の教科書どおりにならないと言えるでしょう。
 つまり、金融経済の危機が、
実体経済を振り回すという結果になっています。

パラドックス 2016 2 28

書名 膨張する金融資産のパラドックス
著者 吉田 繁治  ビジネス社

 早速、この本から気になるところを引用しましょう。
以下は、引用です。
「欧米の金融機関の巨大損には蓋がされている」
 2015年現在もなお、デリバティブについては、
保有している間は、時価評価の必要がないという特例が続いています。
 米国と欧州の金融機関では、
持ち手が計算した理論値が計上され続けています。
 本当の損失が、いくらだったのか。
世界の誰も知りません。
 政府機関が銀行に対して行うストレステストでも、
当局の意図で見過ごされています。
(引用、以上)
 それでも、アメリカは、
リークすることが文化のような国ですから、
ある程度、「透明性」があります。
問題は、往々にして、秘密主義と言われる欧州です。
 それしても、いつも思うことは、
GDPに対して大きくなりすぎた金融資産です。
その金融資産が、また金融危機を引き起こすでしょう。
 世界は、金融に依存しすぎているのです。
金融資産は、GDPに対して、何倍が適正なのか、わかりません。
 しかしながら、私は、
リーマン・ショックの前後に警鐘を鳴らしました。
もはや、金融資産の数字は、天文学で使うような数字になってしまった。
あまりにも実体経済から離れすぎていると。
 もちろん、このような批判は、
金融機関だけでなく、各国の中央銀行にも該当するでしょう。
 金本位制がない現代においては、
いくらでも紙幣を印刷できます。
いや、電子化された現代では、印刷する手間もありません。
無尽蔵に増えた紙幣が引き起こす未来は、どうなっているのか。
 それでも、インフレは起こらないでしょう。
世界的に高度に発達した物流システムによって、物資の不足は起こらないからです。
 インフレは起こらないが、金融危機は繰り返される。
それとも、「見たいところは見て、見たくないところは見ない」という「金融ファンタジー」の世界に浸るのか。
 「藁の上の回復」は、いつまで続くのか。
デリバティブや不良債権が作った空洞の上に藁をかぶせても、風が吹けば、どうなるのか。











































































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